文系経済学部から東工大の情報工学系修士課程の1次試験にほぼ独学で合格した時に読んだ本

本稿では文系メインの大学*1 の経済学部から東工大情報工学修士課程、及び名古屋大の情報科学研究科の1次試験にほぼ独学で合格した時に読んだ本について書きます。 まえがきと前提条件を飛ばして本だけを知りたい方は、目次の

  • 入試は直接関係ないけど基礎作りや数学を好きになるきっかけ等になった本
  • 大学院入試一次試験対策に読んだ本

を参照できます。

目次

まえがき、このエントリで書くこと

私は学部までは名古屋にある文系大学の経済学部に居たのですが、講義を受けたり卒論を書いているうちにシミュレーションやデータ解析等を用いて「経済学をアップデートしたい!!」と思うようになり、そういったことができるのが情報系の分野だったのでそこに進学しようと思いました。その際に大学院で理転するわけですが、大学院で理転する前例があんまり見つからなかったため、若干心細い思いをしていました。そこで、共有されている大学院で理転した前例を一つ増やそうと思い、このエントリを書いています。*2

合格したのは、

の2専攻で、私は東工大に進学しています。

これは2016年入学の話なので若干古い+出題範囲、傾向も変わっている可能性が高いのですが、求められるレベルについてはこの3年でそこまで大きく変わらないだろうと思っているので公開します。また、2019年現在でもっと良い本が出ている可能性も十分にあるので、ここにない本を選ぶ際にも役立つように、本を列挙するだけでなく、その本についての簡単な解説、感想についても記述します。

このエントリで書かないこと

一次試験には関係ないけれど研究計画や研究そのものに使った本、研究テーマを考えるに至った本、理転にあたり教養として読んだ本を書いているといくら時間があっても足りないので、今回は対象外とします。研究室訪問の方法、時期、出願先の決定方法についても、本だけでも十分長いエントリになってしまうのと、他に良質な記事を書いてくださっている方々がたくさんいらっしゃるので今回は対象外です。

前提

前提として、大学入学時点での自分の能力は以下の通りでした。個々人に合わせて割り引いたり足したりしながら読んでいただけたらと思います。

大学入学時点で

  • プログラミングはちょっと経験があった、(HSP,VBで基本的な制御構造を学び、Cの簡単な本でプログラムがどのような仕組みで動いているかをおおまかに知っていた。)
  • 数学はそれほど得意ではなかった。数2Bまで履修していて、公式を問題なく使える程度
  • 経済学部で開講されていた必修の数学は受講していた。(実数論の初歩から簡単な多変数関数の微分まで、積分はなかった。)

の知識がありました。

入試は直接関係ないけど基礎作りや数学を好きになるきっかけ等になった本

読んだ順番としてはこちらが最初なのでこちらから紹介しますが、もし、入試に直接関係があった本のみ参照したい方は大学院入試一次試験対策に読んだ本まで飛んでください。

■物理学のための数学

物理学のための数学 (BERET SCIENCE)

物理学のための数学 (BERET SCIENCE)

大学1年の冬に本屋で偶然立ち読みして、数学を好きになった本。これまで数学は高校で学習してきたけれど、それが何を示しているのか、こういう計算をするとなぜうれしいのかということがわからなかったけれど、物理学という観点からそれがおぼろげながらもわかった事に衝撃を受けた本です。数学は定義から出発すれば概念が複雑であってもたどりつけないことはなく、それならもっと面白い、高いところに行けそうだということわかった本の一つで、もっと数学を知りたくなったきっかけになりました。

マグロウヒル大学演習 離散数学 コンピュータサイエンスの基礎数学

離散数学―コンピュータサイエンスの基礎数学 (マグロウヒル大学演習)

離散数学―コンピュータサイエンスの基礎数学 (マグロウヒル大学演習)

内容は集合論が半分グラフ理論が半分といった印象です。大学入学直後当時の私は「大学の数学は高校の数学よりも難解で複雑である」のような先入観があったのですが必ずしもそうではないということが分かった本です。また、集合論の考え方を持っておくと、多くの場合で数学を学ぶ際に非常にすっきりと概念を整理できるので、そういう意味でも読んでよかった本だと思います。社会に出た今でも集合論は数理的なもの以外でも様々な意思決定で役に立っています。

■やさしく学べる線形代数

やさしく学べる線形代数

やさしく学べる線形代数

予備知識を全く必要としない(行列の足し算、逆行列の求め方から丁寧に解説されている)固有値固有ベクトル、行列の対角化、2次曲線の標準形まで書いてある本。読み切るまでに多くの時間は要さなかったので、線形代数とはどんな科目なんだろうということを簡単に俯瞰するのに役立ちました。

■やさしい 解析学 〈ベーシックコース〉S.K.スタイン (著), 三橋 賢市 (翻訳)
■やさしい 解析学 〈アドバンスコース〉S.K.スタイン (著), 三橋 賢市 (翻訳)

やさしい解析学―ベーシックコース

やさしい解析学―ベーシックコース

やさしい解析学―アドバンスコース

やさしい解析学―アドバンスコース

例えばイプシロンデルタ論法について、実際にε、δに値をあてはめた練習問題があって、感覚をつかむのに一番わかりやすかったと思います。それに限らず日本の高校数学の範囲にさかのぼりながら、割と丁寧に解説してくれているので文系数学から理系数学への橋渡しにちょうど良いと思いました。ただ、誤植があまりにも多すぎでもはや笑ってしまう(数学の本に誤植はつきものだと思ってはいますけれども、それを差し引いても多い)のです。私の場合は、誤植であることを証明するために裏どりをしながら読んでいったので、結果的に力になったように思います。

■マンガでわかるフーリエ解析
マンガでわかるフーリエ解析

マンガでわかるフーリエ解析

フーリエ変換という名前が格好良いからと、本当に当時文系だった自分が漫画でわかるのかを検証したくなったから、という動機で読んだ本。結論から言えば本の内容に関しては理解できました。漫画だけどさらっと読めるわけではなく、考えなければいけないことももちろんあったので、"「やさしい」⇔「ラクに(この本は十分楽な部類だけど)わかる」"というわけではないのだなということを学びました。余談ですが卒業論文でこれが非常に生きるのですが、そのころはそんなことは予想だにしていませんでした。

Excelで学ぶフーリエ変換Excel 2010対応版

Excelで学ぶフーリエ変換−Excel 2010対応版−

Excelで学ぶフーリエ変換−Excel 2010対応版−

卒論を書くにあたり、指導教官の先生に勧められた本です。Excelフーリエ変換によるスペクトル解析を実装します。視覚的に計算過程が表示されるので、どういう過程でこの値が表示されるのかみたいなことがわかって非常に良かったです。Excelを用いてExcel2010対応版なのは読んだのが2013年だったからなので、もっと新しい類似の本があるように思います。

■大学1・2年生のためのすぐわかる数学

大学1・2年生のためのすぐわかる数学

大学1・2年生のためのすぐわかる数学

上記の本を読んで理解が浅いと思った箇所について、手を動かして回答しました。例題と計算過程を含んだ解答、練習問題という構成(チャートに近い)です。

■スバラシク面白いと評判の初めから始める数学III・C (Part1)

スバラシク面白いと評判の初めから始める数学III・C (Part1)

スバラシク面白いと評判の初めから始める数学III・C (Part1)

数Ⅲは何をしているのかを簡単に俯瞰的に見るために読みました。文字や矢印の色がたくさんあって個人的にはどこを見ればよいのかわからなくなってしまうため読みにくいなと思いましたが、色分けがされているので読みやすいと思う人もいるだろうという意味で好みが分かれそうな本だと思います。

■総合的研究 数学Ⅲ

総合的研究 数学III (高校総合的研究)

総合的研究 数学III (高校総合的研究)

数Ⅲの知識が足りないと思ったときに、辞書的に使用していました。

大学院入試一次試験対策に読んだ本

主に 書籍 | 東京大学 大学院 情報理工学系研究科OCWを参考に、左を読むにあたって自分の理解を補うための本は図書館や本屋に通って選書しました。

■数理系のための基礎と応用 微分積分〈1〉―理論を中心に (ライブラリ理工新数学)
■数理系のための基礎と応用 微分積分〈2〉―理論を中心に (ライブラリ理工新数学)

数理系のための基礎と応用 微分積分〈2〉理論を中心に (ライブラリ理工新数学)

数理系のための基礎と応用 微分積分〈2〉理論を中心に (ライブラリ理工新数学)

読みながら講義を受けているつもりでノートを取っていました。わからないところは写経のつもりで書いてきたけど、書き写して読み返してみて初めてわかることもあったので、写経の効用はこういうことなのかなと思っていました。複雑な概念も多く心が折れそうになりましたが、「わからなければ定義に戻る」「それでもわからなければ別の本、別の説明方法を参照する」を行動原則にして読み切ることができました。練習問題はまだこの段階では途中式が欲しかったので、後述の『よくわかる微分積分』で演習をしていました。

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講義を受けるつもりで取っていたノート。1章で表裏書いて1-3枚くらい(ほかの本のメモも含む)

線型代数入門

線型代数入門 (基礎数学)

線型代数入門 (基礎数学)

基本的に定義→定理→証明→例の順に書いてあり、明解で読みやすいと思いました。ただ、当時の自分には過不足がなさ過ぎて読むのに時間がかかりすぎた and 後述の線形代数学の方が当時の自分のあっていたと思ったため3章が終わったところでそれに乗り換えました。必要なことが簡潔に書かれていたので、もし現在、大まかに分かったうえで読み返すならこれを選ぶかなと思います。

線形代数

線形代数学(新装版)

線形代数学(新装版)

帯の文である「驚くほど親切」という言葉通り、非常に親切に説明していながらも、厳密性を著しく損なったり天下り的な説明に堕さず、きちんと解説してくれているので、非常に重宝しました。練習問題も豊富で、もし解けなくても対応する章を読めば必ず解けたのでその点でも力になりました。体感ですが、レベル感としてもしっかり読めばその先(もちろん試験に限らず)線形代数で困ることは少ないもしくはなかったように思います。

■よくわかる微分積分

よくわかる微分積分

よくわかる微分積分

演習としてこれをすべて解きました。大学向けの教科書には珍しく例題については解答の計算過程を非常に丁寧に書いていてくれているので独習には非常に重宝しました。公式サイトの解説にもあるように証明のない定理は存在しないという禁を破り、その代わりに例題を付けてくださっているため、定理の証明については別の本でカバーする必要があります。

■やさしく学べる ラプラス変換フーリエ解析 増補版

やさしく学べる ラプラス変換・フーリエ解析 増補版

やさしく学べる ラプラス変換・フーリエ解析 増補版

読み始めた動機は卒論を書くにあたって必要だったからですが、入試でも役立ちました。上記に挙げた2冊、『マンガでわかるフーリエ解析』と『Excelで学ぶフーリエ変換Excel 2010対応版』については数式を直接使うような例題が少なかったと思うので、それを補完していました。

■単位が取れる微分方程式ノート

単位が取れる微分方程式ノート (KS単位が取れるシリーズ)

単位が取れる微分方程式ノート (KS単位が取れるシリーズ)

数学科や物理学科など数学がかなり必要な専攻以外の大学院入試に必要な分はぎりぎり(本当にギリギリ)対応可という印象。説明がちょっと天下り的でもあると思うので、もっと詳しい本をやっておけばよかったとちょっと後悔しました。上記で挙げた物理学のための数学もそうなのですが、微分方程式は現象をモデル化するのになぜ役に立つのかというコラムもあり、今まで知らなかった現象の記述方法を知れたと思えたのでそういう意味で面白く読めました。

■TokyoTech Be-TEXT 数理計画法

TokyoTech Be-TEXT 数理計画法 (TokyoTech Be‐TEXT)

TokyoTech Be-TEXT 数理計画法 (TokyoTech Be‐TEXT)

高校時代の同級生で東工大に進学した友人から勧められた本。穴埋め式になっていて巻末に解答があるので、1度目に読むときに緑色の透明な下敷きで見えなくなるペンで解答を書きながら理解して、あとは下敷きで文字を隠しながら理解をチェック、足りない箇所を補完しました。

■基本から学ぶC言語プログラミング

基本から学ぶC言語プログラミング

基本から学ぶC言語プログラミング

名古屋大学の研究室見学で見学に行った際の院生の方に勧められた本。著者の先生が公開されているプログラミングの講義( プログラミング1 )の演習問題を進めるにあたり追加の本として読みました。プログラムは1行目から順に実行されるということから解説してくれているのと、問題も資料を読めば解けるものだったので、1からC言語を通じてプログラムがどのように動くのかを知りたい方に勧められると思います。私は中学の時にプログラミングを少しやっていた時期があったので、基本的な制御構造等の書き方はそれほど苦なく読み進められましたが、ポインタなど当時はあいまいに理解していたことを実際に使ってみたり、メモリがどう使われるかというようなことを理解することで、その時持っていた断片的な知識を体系化するのに役立ちました。

■KIT数学ナビゲーション
http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/category/henkan-tex.cgi?target=/math/category/index.html
本当に数1の因数分解から大学1・2年の数学について解説してくれているので、公式がなぜそうなっているのか、この式の展開はなぜこうなるのかこういう積分の解法が思いつかない、という用途で文系か理系か、高校か大学生であるかを問わず広く勧められるサイトだと思っています。大学院の過去問を解くくらいになってくるとやはり使用頻度は減ってきますが、学び始めの時は非常にお世話になりました。

■高校数学の美しい物語
https://mathtrain.jp
上述のKIT数学ナビゲーションと同じような用途で使っていたのと、息抜きの読み物として面白いと思ったのでよくお世話になっていました。

■過去問
7月下旬から始めて、一日1年、1専攻について5年以上分解いて、答え合わせ+弱い個所の復習です。解答が入手できない場合は類題を探してくるか、同じ問題を2-3通りの方法で解いて解答が同じなら正答と推定してました。最低でも6割以上、平均して8割くらい取れていたかなと記憶しています。体感ですが、この状態になって受けた本番では1科目事故(4-5割程度しか取れてなさそうだと思った)を起こしながらも、別の科目で9割くらいをとって全体で7-8割くらいはとれていたかなと思います。

その他、思い出したら追記します。

*1:こちらも大学名を書くとほとんど誰か特定されてしまう(されても良いのですが)のでこう書きます

*2:とりあえず数学についてはこれくらい読めば追いつけるという例が一つあるのだなーのような感覚をつかんでくださるだけでも十分書いた意味があると思っています。

ブログをはじめました。

どうも初めまして、rya-yamaと申します。
 
Web系の企業でエンジニアをやっています。
出身は名古屋で、経済(学部)→情報工学(大学院)を経て現在は自社開発の需要予測システムについて、バックエンド、計算処理の実装を中心にたまにフロントエンドも触っています。
現在は人間が勘と経験でやってきたことをより高い精度でスケーラブルなものにできるという理由で、データ解析、機械学習に興味があります。
 
Wantedlyに簡単なプロフィールもありますので、詳しくはそちらもご参照いただけます。 https://www.wantedly.com/users/18317032
 
ブログを開設した理由として、以下のことを達成できたらいいなぁと思っていることが挙げられます。
  • 自分のやってきたこと、達成できたことを可視化する
  • 自分のやってきたこと、達成できたことを再現可能な形にして公開することで、同じことをやってみたい人に貢献する
  • これをもとに話題作りや、コミュニケーションが取れるようになればもっと良いなぁ
今やっていることが完成して嬉しいとか、新しい何かを買った等エモーショナルな記事については後々noteで使い分けて書いていこうかなと思っています。
 
とりあえず今後は今までどこかで公開しようと思っていたけど公開していないことや、今やっていることについて書いていこうと思います。
今(2019年9月現在)予定しているもので今挙げられるのは、
  • 文系大学から理系大学院にほぼ独学で理転した時に読んだ本
  • 統計学機械学習について読んだ本
  • ホームセンターで6000円の板(全長1.8m)を買ってきて机を簡易的に拡張したら非常に快適になった話
  • 強いPCを買って初期不良を引き当てて交換してもらった話
  • TensorFlowをRTX2080Tiで動かした話
です。
 
それを書くに伴って文体とかも慣れていけたらよいなと思います。
みなさまよろしくお願いいたします。